マンション管理組合の役員は、マンションの資産価値を維持・向上させ、居住者の生活環境を守る重要な役割を担っています。しかし、その責任は重く、ときには損害賠償請求を受けることもあります。
本コラムでは、実際の判例をもとに役員が負う賠償リスクを解説し、マンション管理組合向けの火災保険における役員賠償特約の必要性について説明します。
役員賠償の具体的な事例
〇理事長の私的利益追求による損害賠償請求:
東京高裁令和元年11月20日の判決では、理事長が自己所有住戸を高値で転売するために大規模修繕工事を強行したことに対し、管理組合に対する善管注意義務違反が認められました。理事長は、総会や理事会の決議を得るために虚偽の説明を行い、工事費用の一部を住宅金融支援機構からの借入金で賄ったため、将来の区分所有者に負担を強いることとなりました。
(出典:虎ノ門桜法律事務所ホームページ 裁判例)
〇会計担当理事の横領による損害賠償請求:
東京地裁平成27年3月30日の判決では、会計担当理事が管理組合の資金を横領した事案において、理事長が職責を果たしていれば横領を防げたとして、管理組合に対する損害賠償責任が認められました。損害額については、管理組合の実情を踏まえ、過失相殺の法理を類推適用して減額されています。
(出典:新銀座法律事務所ホームページ 法律相談事例)
これらの事例は、管理組合の役員がその業務遂行にあたって善管注意義務を負うとともに、担当役員以外にも責任が及ぶ可能性があることを示しており、その責任は重大であることをご理解いただけるものと思います。
分譲マンションを巡る裁判について
次に、分譲マンションを巡る裁判に関するデータをみていきます。マンションみらい価値研究所がホームページ上で公開しているレポートによると、分譲マンションを巡る裁判例における被告の数とその割合は以下のとおりです。
このデータによると、全体の約23%の事案で管理組合が被告となっており、決して少ない割合ではないことがわかります。
また、裁判例の数を時系列でみていくと、右肩上がりに増えていることがわかります。
内容は管理組合運営に関連するものが最も多く、組合運営の難しさを表していると言えそうです。
(出典:マンションみらい価値研究所「紛争の実態。マンションではどんな訴訟が起きているか?」)
役員賠償特約の必要性
管理組合役員の責任が問われ、損害賠償請求を受けるような場合でも、マンション管理組合向け火災保険の役員賠償特約により、その損害を補償できます。
以下では、この特約の必要性についてご説明します。
〇予期せぬトラブルへの備え:
既に紹介した事例の他にも、例えば総会での議案の決議を巡って言い争いになり、理事が居住者から名誉棄損として慰謝料を請求されるといったケースなどが考えられます。
また、管理費から定期清掃費用を支出した際に、その金額についての検討が不十分であり、結果として多大な請求となったとして理事長が居住者からその一部を返還するように請求される事例もありました。これらのトラブルに対して、役員賠償特約があれば、損害賠償金や弁護士費用などを補償することができます。
トラブルの当事者同士が協議すると、解決に向けた冷静な話し合いができないケースがあり、さらに大きなトラブルになる可能性も否定できません。そのような事態に備え、専門家の支援が受けられるようにしておくことは、役員の負担軽減にもつながります。
〇情報漏えい対応:
例えば、理事が組合員名簿を誤って漏えいさせてしまい居住者から損害賠償金を請求された場合、役員賠償特約による補償の対象となります。
情報漏えいの対応費用や見舞金なども補償されるため、役員は安心して職務を遂行することができます。
まとめ
マンション管理組合の役員は、居住者の住環境を守るために重要な役割を果たしている一方、その責任は重く、ときには損害賠償請求を受けることもあります。マンション管理組合向け火災保険の役員賠償特約は、役員が損害賠償請求を受けた際にその損害と費用を補償するための重要な補償です。
予期せぬトラブルや情報漏えい、共用部分の管理不全等による火災事故などに対して、役員賠償特約があることで、役員は安心して職務を遂行することができます。
管理組合の役員の皆さま、組合員の皆さまにおかれましては、ぜひこの機会にご加入の保険をご確認いただき、見直しをご検討されてはいかがでしょうか。
大和ライフネクスト株式会社では、マンション管理会社としての経験・ノウハウを生かし、マンション特有のリスクや問題を理解し、マンションに特化した最適な「マンション管理組合」の保険をご提案いたします。現在ご加入中の保険の内容を理解し、アドバイスを差し上げることが可能です。
マンション管理組合の保険についてはお問い合わせフォームよりお気軽にご照会ください。
マンション管理組合様向けの保険商品ご案内ページはコチラ
個人のお客様向けの保険商品ご案内ページはコチラ
※このご案内は、概要を説明したものです。ご契約にあたっては必ず各引受保険会社のパンフレットおよび「重要事項のご説明」をあわせてご覧ください。また、詳しくは「ご契約のしおり(普通保険約款・特約)」をご用意しています。ご不明な点につきましては、取扱代理店までお問い合わせください。
【取扱代理店】
大和ライフネクスト株式会社
インシュアランスエスコート部
〒107-0052 東京都港区赤坂5-1-33
TEL:0120-75-0032
<受付時間>
平日:午前10時から午後5時まで
(2025 年7 月承認番号:B25-200539)
新着情報・セミナー情報
2025.07.17